二代目恋川純 、取材後記

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三吉から神戸まであなたを追って

8月に入ってずっと、いまごろ二代目恋川純は、神戸新開地劇場で熱い舞台を繰り広げているんだろうなと考えていた。

関東にいると、関西を拠点に活動している劇団の公演は、なかなか観ることができない。1年か2年に一度、近くの劇場にやってくる巡業を心待ちにする。待ちに待った公演が始まると、あっという間の1カ月。いい舞台であればあるほど、千秋楽が終われば祭りのあとのようにさびしい。夕暮れ時などにふと、そろそろ夜の部が始まる時間だなと、遠い劇場を思ってみたりする。

旅をする劇団や役者をそんなふうに思って待つことも、旅芝居と呼ばれる大衆演劇の楽しみのひとつだと知るようになった。

そのことをより強く思ったのは、ほかでもないこのコロナ禍だ。たとえ自分は観られない舞台でも、全国の劇場の幕が開いてくれさえしたら、心安らかでいられたのだ。

当たり前に幕が開かないことがある。外出自粛期間中に、あるいはその余波で、閉館した劇場も全国にはいくつかある。昨日と同じ今日はない、その不安がいまも続くなかで、役者も劇場も観客も手探りで過ごしている。

そして同時に、一方的にではあるにせよ、遠くで元気にしているだろうかと祈る、たくさんの人があることの幸せを、こんなに思い知らされたことはなかった。

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