第6回 近江飛龍を演じる

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「通天閣」のお芝居のなかの、観客の目が怖いというくだり。それは飛龍座長のなかにもありますか?

ありますよ。それはしょっちゅうです。5年前、脳血栓で舞台で倒れてからなんですけど、対人恐怖症になって。しばらくの間、送り出しとか出ない日がいっぱいありました。でも舞台は出なあかん。地方のヘルスセンターとか健康ランドの公演のときに、お風呂に行くのが嫌でした。人に会うのが嫌で。

どうやって抜け出したのかは、よくわからんのですよ。朝起きて、外出て、太陽見たら、涙出てきたんです。あれ? オレいままで何してたんやろ、って思って。そのときパッと、自分の歳がなんぼやって勘定したんです。倒れたのが42ですわ、男の本厄。だから45んときか。45歳の秋ですわ、10月くらいに。涙が出てきたときに、自分45や思たんです。自分の両親が、ふたりとも60そこそこで死んでるんですよ。短命やったんで。あ、オレ、あと15年しかないって思ってもうたんです。もしかしたら、あと15年で死ぬかもしれんって思ったときに、15年楽しく生きようと思って。

いまも変わってないです。60まで生きたらもうけもんやと思ってて。それ以上生きたら、すげえなと思ってます。15年をすごく楽しく生きよう、それはありますね。そんときから、がんばろって思って、急に変わったんです。

「通天閣」には、お父さんが本名と芸名の狭間で悩む心情を吐き出す場面がありますね。

あれは、僕の気持ちを言わしてますね。父親はそんな人じゃなかったんで。典型的な舞台人。本名と芸名の自分との見境がない人やったんで、本当に。僕は、オンとオフを確実に切り分けてるタイプ。

近江飛龍っていうのは、自分が観たい人間をつくってるんですよ。自分がやりたいじゃなしに、自分がこういう人を観たいなっていうのをつくってて、その偶像が近江飛龍なんです。近江飛龍を演じてる、豊田太平さんなんですよ。あくまで。

化粧をした時点で芝居が入ってる。人格も全然違う。プロデューサーが豊田太平なんです。

自宅3階の「17LIVE」を配信しているスタジオで。

化粧をしていない素顔でも、17LIVEやyoutubeを配信しています。それも含めて演じている?

そうですね。そこも含めての近江飛龍です。役者さんって、案外、その切り替えがない人が多いんですよ。ほんとにみんなそのままなんです、普段から。僕はそれができないんですよ。仕事は仕事、プライベートはプライベート。

17LIVEも、YouTubeも仕事って割り付けてるから。「VROG(ブイログと題した映像)」(YouTube)は、普段の生活を流しているようで、全部が全部いいとこしか流してない。気持ち切り替えて、カメラ回して、はい撮影みたいな感じでつくって編集してます。

(2020年8月29日 堺市自宅特設スタジオにて)

取材・文 佐野由佳

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