家を持ったことで仕事のやり方も変わりましたか?
そうですね。会社(株式会社ジー・アイ・エンターテイメント)つくったのもそうですし、同じ土地に根付いて仕事してみたかったんです。地に足をつけて、根を張って。そうしたら、なんか違う面白いことができるんじゃないかなとか思って。
うちの劇団は、いまは年に3カ月だけ舞台公演をやって、あとはそれぞれで活動する形をとってます。一年中、全国あちこちまわってたらね、地方のお客さんとか喜びはるんやけど、おっきい仕事やチャンスがあったときに逃してしまうんですよ。
もう年齢的に最後かなと。いまやっとかんかったら悔いが残るかな、いまのうちにと思ってこの形にしました。
テレビの仕事だったり映画の仕事だったり、大きい文化会館の舞台の仕事があるんやったら、こういう状態にしとかないとできないんですよ。
前に一回、新歌舞伎座の仕事が入ったときに、スケジュールを3カ月おさえられたんですよ。あれはきつかって。もしそういうことが起こるんやったら、最初から劇団を休業状態にしておいて、やるときだけ集まろうということにしました。
それが功を奏したのか、いまちょうどいいですね。コロナで予定は狂ったものの、僕も劇団座員たちも、その前から舞台以外の仕事もしてますから、いままでとそんなに変わらない生活ができました。
僕の場合、会社は会社、個人は個人で分けてるんで、会社もそんなにうまいこといってないやろって思って、決算が終わったら、え?っていうくらい収入があったんで。税理士さんが、もうちょっと経費使いましょうねって。17LIVEの影響もすごいありますね。17やりだしてから、DVDの売り上げがハンパないです。
その多角経営な考え方はどこからきてるのですか?
何で覚えたかっていったら、投資やってたんです、ずっと。為替トレードとか全部できます。そういうのは、いまやめてますけど。
保険の世界の考え方でもありますけど、ポートフォリオっていう考え方があって、何ごともひとつに絞るとひとつが潰れたときには全部潰れる。それを5個にしといたら、ひとつ潰れても4個残るっていう考え方です。それを知ったときに、あ、これは絶対に身につけとかなあかんと思って。
舞台一本に絞ったら、舞台が潰れたときにおれは路頭に迷うと思ったんですよ。そこからいろんなことをやりだした。投資は難しいですけど、コツですよ。大儲けしようと思ったら、絶対無理。こつこつこつこつ(笑)。
失敗? あります、あります。
僕、為替の取引が得意で、元値30万を800万にしたことがあって。米国のトランプさんの大統領選挙のときですよ。すごい値が動いたんです。それで30万が、正味600万まで増えたんですよ。さらにその日1日の取引で、600万が800万まで増えた。これいけると思って、も一回やったんですよ。そしたら、800万が250万まで減っちゃった、5秒くらいで。あ、オレ、無理と思って。もともと30万が、最終的に250万になったわと思って、全額引きおろして家族でハワイ旅行に行きました(笑)。それからやってないです。いまも為替は持ってるんですけど、人に任せてやってもらってます。
そこでさらにつぎ込まない堅実な生活力と、舞台の枠からはみだしてしまうエネルギーは、飛龍さんのなかで無理なく同居してるんですか?
全然無理はないですね。役者でおる限りね、お金の使い道っていうのがわからなかったんですよ。お金の使い方と、お金が入ってくる道筋、お金のサイクルが役者さんてわからないですよ、案外。日銭で生活してるので。
でも普通の生活すると、それがわかるんですよね。株はお金の回り方を知るのに、すごく勉強になりました。借金も、世の中にはいい借金と悪い借金があって、いい借金をしようって思って。いま借金、1億円あるんです(笑)。でもそれも、残っていく1億なんで。違うとこから収入がありながら、そこから抜いてもらってるんで生活に支障はないです。銀行のちゃんとした使い道っていうのを教えてもらって、銀行さんから借りてます。
「通天閣」のなかでも、勉強したかったっていう台詞があります。17LIVEを観に来るお客さんのために中国語を習ったり、勉強もお好きなんですね。
勉強好きなんですよ。でもその、閉じこもって受験のためにするいうような勉強はダメなんですよ。自分にとって必要なことだけを覚えていく、いらないことは覚えない(笑)。株のことも、人に教えられるくらい知識がありますよ。教えてちょうだいって言われたら、いいよ、そのかわり授業料払ってね、って言えるくらいには勉強しました。
あるときから、舞台の大入やご祝儀にこだわらなくなったというお話を17LIVEのなかでされていました。それも役者さんとしては珍しいですよね。
舞台のご祝儀は大事な収入源ですけど、ご祝儀や大入って、ファンの人に負担をかけることにもなりますよね。大入出すために、余分にチケット買ってくれたりする方もいますから。あるとき、今日は大入を出してあげられなかった、ってファンの人が涙を流したのを観て、ああ、こんなに大入を出すことに一生懸命になってくれてたんだなと申し訳なくなってきて。それから、舞台で大入のこことか、言うのをやめました。17LIVEでも、ライバー同士がギフトの点数で競い合うようなイベントがしょっちゅうありますけど、僕はそこはどうでもいい。みんなが楽しく遊びに来てくれたらそれでいい、っていうとキレイ事みたいに聞こえるけど、いまやったら、ほかに仕事があるんで、あちこち合わしたら、そこそこ収入がある。それは大きいです。いつだって、大儲けしようとは思ってないんです。そういうことは向いてない(笑)。
(2020年8月29日 堺市自宅特設スタジオにて)
取材・文 佐野由佳