松竹新喜劇の渋谷天外、そして桐龍座恋川劇団座長恋川純の両名がタッグを組むという、めったに見られない舞台が上演されるとあって、行ってきました「シアター・エートー」。神戸・三宮駅から徒歩3分の100席ほどの小さな劇場だ。
この企画の詳細は、すでにお伝えしたとおり(天外さんのZoomな笑顔がキュートなこちらをご覧ください)。このインタビューのなかでも触れているように、今回の舞台は芝居「丘の一本杉」上演のほかに、天外さんと純座長が客席からお題をもらい、それに沿った即興劇を演じるという「俄(にわか)」に挑戦。第3部は恋川純座長with恋川劇団の面々による舞踊と殺陣という構成だった。
大衆演劇ナビとしては、何が新鮮だったといって、ナチュラルメイク(いつもに比べてという意味でナチュラル)に地毛で芝居をする恋川純座長、そして恋川劇団の面々だ。しかも芝居のなかで一度も、役をはずれて笑いを取りに行ったりしない純座長を観たことかもしれない。恋川劇団でやっている舞台とは、まるで違う手法で芝居を演じる。
「丘の一本杉」は松竹新喜劇の前身、松竹家庭劇の時代につくられた芝居で、鍛冶屋を営む親子を通して、父に認められたい息子と自分の老いを認めたくない父親の葛藤を描く。昭和30年代を舞台にしているが、ある意味、いつの時代にも変わらない親子の間に流れる情をテーマにした物語だ。
今回は演出・構成に吉本新喜劇などでも脚本・演出をつとめてきた徳田博丸を迎えて、新たな芝居として上演した。キャスティングも、元OSKの男役トップスターの高世麻央や、映画で活躍する浪花ゆうじ、劇団往来の座長要冷蔵など、それぞれ違うジャンルの演劇で活動する役者たちが集まった。
初日夜の部が終わったあとの舞台で、渋谷天外、恋川純、徳田博丸、鈴木健之亮(劇団往来代表 今回の舞台では渋谷天外とプロデューサーをつとめる)、の各氏に聞いてみた。
初日が終わっていかがでしたか?
恋川純(以下、恋川) 役から脱線してアドリブで笑わせたりするような、よけいなことできないし、僕の役、すごいずっと怒ってますからね、疲れました(笑)。疲れましたけど、それもできないとあかんなと思って。勉強になります。こういう機会をいただいて、いろんな方と、その分野のそれぞれのお客さん方が見にきてくださってますから新鮮でした。いつも自分でやってるときは、演出もしながらなので、実際に舞台に立って稽古してると、自分がどう見えてるのかはわからないじゃないですか。徳田さんに客観的な目で的確なことを言っていただくのは、ものすっごい勉強になります。僕のなかではそうじゃないのに、そう見えてたのかっていうこととか。いっぱいあったので。
大衆演劇ナビ(以下、ナビ)たとえば具体的にどういうところですか?
恋川 稽古の最初のころ、すごい仲いい親子に見えてたらしんですよ。そんなつもりで演じてないのに。僕が親父のほうを見てると、ほんとに腹立ってたらそっち見ないでしょ、って言われて。そうやあなって。もっともっと親父から目をそらしてるくらいでちょうどいいと。その加減が自分だとわからへんなと思って。
ナビ 前半特に、かなり激しくいがみ合ってますからね。
恋川 そうですね。あれがあるからまた、ちょっと面白くしてるときに笑えるんですけどね。緊張と緩和で。
渋谷天外(以下、渋谷) 緊張してるの?
恋川 緊張してますよ。天外さんに何されるかわからないから(笑)。
渋谷 緊張感は持ってやってください(笑)。
鈴木健之亮(以下、鈴木) あんた(渋谷)にはもっと緊張してもらいたい。
渋谷 今日、ちゃんとやったやん。
鈴木 もっと怒って出てこい!ぐらいの感じだけどな。
渋谷 あんまり怒りすぎると、台詞があるから成立せんさかい。あんなぐらいやで。
鈴木 あんなぐらいやろって思ってるとこがあかんと僕は思うねん。もっと前半、つっこんだ方がえぇんちゃうかな。
渋谷 劇団往来は、ほんまに。ややこしいなあ。
鈴木 (笑)
ナビ 今回の芝居は、もともとの台本とどれくらい変わっているのでしょうか?
渋谷 初演は戦前も戦前、昭和10年代かな。二代目渋谷天外(三代目の父親)が息子役で、曾我廼家十吾先生がこの親父の役をやったと思うんや。基本のストーリーは変わってないですけどね。今回は、柝、打つのもやめようやって。いろんな意味で新しいものになってます。
恋川 笑いのところとかは、イチから徳田さんが天外さんと相談して入れてくれました。もともとの台本のままだとぜんぜんお笑いがなかった。
渋谷 いやあ、今回のお客さん、箸ころんでも笑いよる。みなさん18くらいなのかな?って。
恋川 気持ちはそうなんです、気持ちは18なんです。
ナビ 笑いの部分は意識して入れようと考えたのですか?
徳田 僕は喜劇作家なので、笑いの部分をまずつくって、それから感情の部分をつくるっていうやり方です。まず笑いの部分を徹底的にやって、シュートを入れてく。ゴールを決められるようなスタイルをつくってから、ちゃんとした芝居の感情の部分を抑えていくっていうやり方です。だから最初、稽古のとき、笑いしかつけへんかったから、みんな不安だったと思います。
恋川 稽古のときにアドリブでやったらおもしろかったから、だったらちゃんと取り入れようっていうことで決まったこともありますね。
徳田 突発的なアドリブだと、その役からはずれてしまって、役としてようつっこまない役者さんが多いんですよ。急に素になったりする。それは絶対させんようにして、こうなったら、役としてこうできるよね、っていうとこまで決めておきます。
渋谷 一本杉の前でさ、要さんにつっこむとこあるやん。あれ、お前、素にもどってんぞ。
恋川 すいません(笑)。
徳田 注意してください(笑)。
渋谷 あれは、いつもお前の劇団でやってるつっこみやから。
恋川 (笑)。
ナビ 恋川劇団の舞台とは、かなり違うやり方ですね。
恋川 全然違いますね。イチから違うような気がします。でもやっぱり、普段やってきたことがあるから、成立してると思いますけど。
渋谷 文字に命、吹き込むことをいままでしてなかったからな。
恋川 そうですね。気付いたときには、親父か兄貴か、誰かがやってたのを見て育って。だから芝居の、ここでこういうふうに言うて、感情ここで出すねんとかも、全部、最初はやっぱマネから入る。やってるうちに、自分やったらこっちやなとか、っていう調節をしてっていまの自分の芝居になってるけど、台本を見て、いま天外さんがおっしゃったみたいに、文字で書かれた台詞に命を吹き込んでいくっていうことをやったことがないんですよね。だからこれ、映像とかなくてよかったですよ。もし藤山寛美先生がやってるのを見てしまったら、そのマネになってしまうと思うんですよ。
渋谷 ビデオって見てしまうと、悪いクセが出ちゃうんですよ。うちの連中にはとりあえず、ビデオ見るな、見るんやったら音は消せ、動きだけ取れと言います。
ナビ 稽古は何日間だったんですか?
恋川 9日間くらいですかね。
渋谷 初日は読み合わせくらいやったからな。
恋川 どっちにしても僕は不安やったんで、いっぱい稽古して、教えてほしいって思ってました。
渋谷 津川雅彦さんが、僕が21くらいのときかな。「天笑ちゃん、天笑ちゃん」ってーーそのころ天笑って名前だったからーー「いやあ、やっぱりね、初演、再演、再々演、三回ね、芝居はやらなきゃだめだ」って。穴が埋まっていけへんと。気付いてないとこが、回数重ねることでどんどん埋まって行くわけですよ。1カ月公演で25回やるとしたら、再々演で75回。最低それくらいはしなきゃ見えてこない。下手したら、昼夜やったら倍になるから、150回くらいになるわけですよ、昔はね。それくらい練りこんでいってちゃんとした作品になっていくわけです。こっちの大衆演劇も、昔はもっとひとつの芝居で何日もやったけど、25日が二週間になり十日になり、一週間になり三日くらいまでのときもあったよね?
恋川 ありましたね。いま日替わりですから。やっぱ時間ないじゃないですか。稽古は前の日だけが当たり前、多くて二日間くらい。夜の部が終わってから、しかも昼夜違う芝居をやった後に準備して稽古して本番だから、できあがったものをマネしてやるくらいのスピード感で新しいものをつくってかないと間に合わないっていうのが正直、大衆演劇にはみんなあると思うんです。ひとつの作品をこれだけ、時間かけて稽古することないですから。だから僕、本番が三日間6公演ってほんま短いなと思います。もっともっと公演を味わいたい。千秋楽くらいにやっと何かが見えてくるんじゃないかなって。
渋谷 日替わりで芝居やるってすごいことやね。
恋川 昼、夜で芝居を変えてるときもありますよ。だから密度としては薄いものも、なかにはあると思うんです。そんなつもりはなくても。稽古する時間もないし。
渋谷 若い人が育ちにくいよね。
恋川 そうですね。教えてあげる時間がない。台詞、覚えてっていうのが精一杯。
渋谷 お客さんの層も薄くなってきたから、そうせざるを得ないんやろね。毎日のように観てはって、毎日違うの観たいっていうお客さんが多いんでしょ? 昔は、毎日同じ芝居をやってても、そんだけの人間が入ったわけじゃないですか。客席の人口が少ない。うちらもそうです。いま、なかなかね。お客さんが連日いっぱいになる舞台って、ほんまに数えるほどしかないですよね。
恋川 言い方が難しいですけど、大衆演劇の場合、ほんとに芝居心を持って、昔からのいいものを残していこうという考えよりも、毎日新しいものを次々と、っていう傾向はありますね。サービス精神でルールをどんどん変えていくのは悪いことではないんですけど、役者さんがひとりそれやると、次に来る劇団もやってくれるやろっていう、あの空気感。そうじゃなくてって思うんですけどね。昼・夜、芝居変えてっていう意気込みはいいんでしょうけど、昼・夜一本同じものをちゃんとやるっていうのも大事なんちゃうかな、って思う。お客さんの立場でそこまで考えるのはなかなか難しいやろうし、密度の濃いものを求めてる人は、もっと高いお金払って違う舞台見に行かはるし、大衆演劇に求められてるものって、またちょっと違う感じがします。芝居の完成度より、こんなスケジュールのなか、こんな勢いで新しいもんを毎日頑張ってやってるんやな、っていう役者の頑張りを応援する心を持って通って来る感じするんですよ。1カ月間、あたしたちも頑張って乗り越えた、みたいな。どこか信者的な要素がありますね、いまの大衆演劇は。
ナビ それは違うと感じますか?
恋川 どっちもありますね。毎月、お客さんと乗り越えるような舞台がある一方で、オン・オフできる時間があって、ちゃんと作品を見つめる時間もあって、こうしてほかの舞台をやらしていただく、っていうのは、できるんやったらこれからも僕はやりたいなと思います。自分のいつもの公演を半年やって、半年はオフもつくってオンもつくって、っていうのをやらないと、いまの時代、ちょっと難しいかなっていうのがありますね。うちは、劇団自体の人数も少ないですしね。
渋谷 がんばれ!
恋川 はい、がんばります。
渋谷 (笑)
ナビ 大衆演劇の舞台は、いま芝居よりも踊りに重きを置く傾向があるように感じます。
恋川 そうですよね。ダイジェストみたいになってますよね(笑)、芝居がね。
ナビ そういうなかで、こうして外の舞台にも出て芝居を追求したいというのは、なかなか大変なことですよね。
恋川 そうですね。やりたいことじゃなくて、流行りに乗ったほうがお客さんは入るのかもしれないですけど――言い方がよくわからないですけど、やりたくないことをやってても、自分が輝いて舞台ができない気がして。
渋谷 血ぃや、血ぃや。あんたんとこも。
恋川 親父も芝居好きやったんで。
ナビ 天外さんも三代目ですね。
恋川 僕も、親父の名前という点では二代目で、座長としては三代目です。
渋谷 「売り家と唐様で書く三代目」ってね(笑)。唐様で書いてあるってことは、さんざん勉強さしてもろうて、結局、自分の商売つぶしてるっちゅうことや。家光の例もあるしな。三代目ってろくなもんがおらん。
ナビ 腕のいい親子という点では「丘の一本杉」の物語には、理解できるところも多いのではないですか?
恋川 これはもう、うちの場合は兄貴(恋川純弥)が一番気持ちわかるんちゃうかなって。芝居のなかで、親父と反発してきた息子がある日、家を出て行くじゃないですか。うちの兄貴が劇団出て行ったとき、こんなんやったなって思いました(笑)。僕はそれを見てたほうだから、どっちかっていうと、わーっ言うてる娘さんの立場やなと思って。
ナビ 天外さんにとっても、「丘の一本杉」は久しぶりの上演だとうかがいました。
渋谷 11年ぶり。11年たつと人間、感性が変わりますからね。徳田さんともね、昨日の通し稽古をやってみてから、思うところがあってやり方変えたとこがあるんです。一本杉の前で一人語りするところ。11年前は、もっと単純にやってましたわ。でも今回、もう少し自分なりに複雑に考え直してやってみようと。
徳田 あそこ、怒ってますやんか。稽古場で観てて、そんなに違和感なかったんですけど、劇場に入ってきてやってもらったら、僕も、あれ? ここでほんまに怒っていいんか? って思ったんですね。いや、怒ってるんです。怒ってるけど、もうちょっと複雑よねってすごい迷いが出て、そこ相談したんですよね。
渋谷 それで今日の本番で、芝居を変えた。ぶっつけ本番で。
恋川 昨日、裏で聞いてて、今日の初日に、ほんまにそれを変えはったときに、めっちゃぐっときましたよ。変化していくのを、お客さんの前でやりはったのはすごかったなと思って。出来上がった気持ちの状態で来るんじゃなくて、お客さんの前で気持ちが変わっていくのを肌で感じられたわけやから。息子としても、たまらんようになりますよ。やっぱり。
鈴木 たしかに、今日の本番のほうがよかった、あの一本杉の場面は。僕はその前の場面が納得いかん。
渋谷 うるさいおっさんやな。今日で80点。あと20点、明日、見といて。
徳田 100点取りにいくわけですね。
渋谷 はいはい、もちろんです。
ナビ 「俄(にわか)」をやろうと思ったのはどういうきっかけですか?
渋谷 松竹新喜劇の、というか日本の喜劇の原点とも言われてるんやけど、それをいまだかつて、みんな言うてるわりに見たことがない。いっぺんやってみようかな~って、それだけのことなんですけどね。「俄師(にわかし)」(即興劇をなりわいとした芸人)が町の縁台の前でやってたのが始まりなんですけど、それが舞台に上がると「ぼて鬘(かずら)」言うて、新聞紙に色塗ったみたいな鬘をつけて女役やったり男役やったりしてたという写真が残ってた。露の五郎さんとこがやってはりました。もう亡くなってもうた。
徳田 落語家の?
渋谷 そうそう。あの人が、ぼて鬘でやってはった。もうそれも、いまは絶えてんのとちゃうかな。
ナビ 今回、夜の部は、お客さんから出たお題が「学校」と「遊園地」でしたね。
恋川 「学校」ってお題が出たときに、天外さんが、オレが生徒のほうが面白いやろって言いながら袖にはけたから、僕は先生のほうをやる気まんまんでいたら、天外さんがまさかの自動車学校の教官で始めてきた。だまされましたね(笑)。
渋谷 よかったやろ?
ナビ 「遊園地」で天外さんがいきなり、乗り物酔いしたお父さんで出てきたのにも笑いました。その天外さんに向かって、純座長が「お父さん、無理せんといてっ」っておばちゃんで返してたのも爆笑でしたね。おふたりとも、衣装はスーツなのに(笑)。
恋川 これ、演目でやってもおもしろいですよね。たとえば、次郎長をお題に即興で演じるとか。そっちのほうが「俄(にわか)」に合うんかな。
渋谷 もともと俄師がいてたちゅうのは、みんなの共通語として歌舞伎があったから成り立ってた。けど、いまないんです、そういうのが。それやったら、いっそ、シチュエーションコメディと言われてるものの、もっと原点に戻ったらどうやと思って、今回やってみた。
ナビ いかがでしたか?
恋川 緊張しましたよ。始まる前は、めっちゃ気ぃ重いですよ。ほんまに(笑)。
渋谷 オレ、昨日ずっと夢見てたもん。どうしようかなあ~、って。
恋川 お客さんが笑ってくださると、なんとも言えない快感がありますけど。最初は二人っていうことやったんですけど、徳田さんに仕切っていただかないと無理やっていう話になって。
渋谷 どっかで止めてもらわないとね。
恋川 ほんと、出ていただいてよかったです。
徳田 司会で仕切る演出家はダメですよね。
恋川 めちゃめちゃ盛り上がってはりましたよ。
ナビ 松竹新喜劇のなかにも、「俄(にわか)」は生きてるんですか?
渋谷 即興という意味ではふた通りあって、僕らのなかには、「そんなとこで俄すなよ」っていう言葉がある。アドリブのことを言うんですけど、本来のアドリブと俄は少し違うんです。ちょっと誰かがおもしろいこと考えついて、芝居のなかでパッとやるでしょ。俄にやるわけですよ。そしたらそれに食いつく奴もおるし、伸ばす奴もおるし、それが俄。アドリブっていうのは、その時、その時のひと言、ふた言の返しのことを言うんです。これを素に戻らないで役のままやるのは腕が必要で、たいがい素に戻って役から離れてしまう。だから本道としては、僕は俄というものを大事にしていきたいな、と。うちの劇団でもなかなか俄する奴が少ななってきましてね。だから、若い子たちにそれを覚えてほしいな、と。
ナビ 役のまんま、台本にはない台詞を即興で入れて、ますますその場面が面白くなるというようなことでしょうか。
恋川 今回、思ったのは、稽古場でいろんなことやってるのを演出家さんに見てもらって、アリでいこう、ナシでいこうって相談をしているっていう感じですね。もちろん、本番で生まれることもあると思います。
渋谷 そうでしょうね。今回やった「俄」みたいなものを、もしいまも中座があって、あんなとこでやっても、松竹座でやっても、絶対ウケへん。
ナビ 劇場の大きさということですか?
渋谷 やっぱりね、お客さんとの距離が近くないと。広いと薄まるから。
ナビ 天外さんは今年の5月で松竹新喜劇の代表を退任されると発表されましたね。
渋谷 60歳になる前から、若い子らにお前ら次やらなあかんねんから言うて、やっと9年目になって、松竹も快諾してくれたっていうことなるんですけどね。ぶっちゃけたとこね、36、37歳のときに僕、代表を引き受けたでしょ。同世代の人が観に来てくれてましたよ、少なからずね。結局、その人たちがずーっといままで一緒に来てはって、いま若い子、けえへんもん。若い人がけえへんということは、言い方悪いけど、僕らの世代が死んだら、お客さん誰もおれへんっていう。やっぱり、新陳代謝を繰り返していかんと、新しいお客さん来ないよってことをずっと言うてたんですよ。この人も、いうたらそうですよね。
恋川 そうですね。うちの場合は、息子(恋川桜奨)が大きうなってきたら、お客さん、若い人が来るのかなっていう感じですかね。
ナビ いやいや、座長、十分、お若いですから。
恋川 キャラなのか、ほんまにうちのお客さん、母親くらいの歳の方ばっかりなんです(笑)。
渋谷 今日は昼の部に、松竹のエライ人も観に来てくれましたけど、あの方の目にどう映ったんかなあと思って。
恋川 よく目が合いました、真ん中にいてはったので。
渋谷 これからまた、松竹新喜劇の若手がどう考えて、どうやっていくか。僕はそのうちの色のひとつでしかないと思うんで。今回の舞台で、僕としてはこの男(純座長)が、徳田くんとかとうまいこと組んで、次の何かにつなげてくれたらいいなと思って。僕はこれで、最初で最後やでと言ってるんですよ。
ナビ そうなんですか?
渋谷 なんかやるたんびに、こいつから盗まれて取られてやな(笑)。
恋川 当然やないですか(笑)。
(2023年2月23日 神戸三宮シアター・エートー)
取材・文 佐野由佳