天才と評されることの多い座長ですが、そういわれることをどう思っていますか?
自分ではそんなこと思わないです。天才っていうと、いい意味で努力してないみたいじゃないですか。僕の場合は自分なりに努力してるつもりなので、天才だなんて思ってないです。
努力できることが才能ですね。
自分は生まれたときから役者の子で、親(初代恋川純、鈴川真子)に守られて生きてきたところがあるんで、どうやったら苦労できるかなと思うタイプです。若いときから、しんどいほうを選ばないと成長できないと思って、結構やるんですよ。
具体的にはどんなふうに努力をされたのですか?
若いとき、みんなが遊んだり出かけている間に勉強したら、その人よりも成長できるって単純に考えて。舞台って稽古がなければ、夜はずっとあいてるじゃないですか。ひとりで、テープレコーダーに台詞を言ってみて、自分が思ったように言えてるか何回も聞いて確認してみたり、鏡で立ち回りの型ができているか、ずっとやってました。
なんでわざわざ録音を?
自分のお芝居とか踊りの映像を、見るのが嫌なんですよ。たいていみんな嫌だと思うんですけど。いや、なかには自分の舞台を見るのが大好きっていう人もいますけど(笑)。自分のお芝居の声とか嫌だからこそ、録音して何度も聞いて、思ったように言えるように稽古するんです。
いくつくらいのときに?
役者でやっていこうと決めた13歳から、18歳くらいまでの5年間が、一番そんなことをやってましたね。ガラケーからスライド式の携帯電話になったときに、画面にメモを貼り付けられたので、自分がやりたいこと、毎日やらなければならないことを書き出してたんです。10項目くらい。立ち回り、踊り、芝居、アクロバット、とかとか。携帯を開けば思い出すから。
役どころも変わる年頃ですね。
大人の役もさせてもらえるようになって、いままで子分だけだったのが、台詞もある役をさせてもらえるようになって。若くて、血気盛んな「かけだし」って僕たちが呼ぶ役なんですけど。いま座員に教えるとき、自分があのころ勉強したことを参考にしています。
誰よりも努力した自負はありますか?
ないです。もっと努力している人はいるだろうと思います。ただ、悔しいなって思ったことは、舞台で見返せるように頑張ろうとはずっと思ってました。
うちはよその劇団さんとはほとんど交流がないですけど、大会とかでほかの役者さんと一緒になれば、誰よりもその日の個人舞踊は拍手をもらおう、お花をつけるスキがないくらいの踊りをしようって思ってました。
(2020年7月3日 三吉演芸場にて)
取材・文 佐野由佳
【二代目恋川純 インタビュー連載】
第1回 いろんなものを捨てました!
第2回 コロナのおかげで
第3回 しからずんば、ぬ〜ん
第4回 荷物をまとめた「13の夜」
第5回 小純が純になったワケ
第7回 父の教え
第8回 座長二代目恋川純ができるまで
第9回 おしゃれな最後