第9回 おしゃれな最後

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得意な演目は何ですか?

三枚目の役を演じる芝居が好きですね。若いころはどうしていいかわからなかったですけど、いまは演じていて楽しいです。お客さんとからめるので、見てもらうというより、一緒に楽しめます。

そのほかでは、得意というのではないですが、この歳になって似合うようになってきたのかなと思うのは、「関の弥太っぺ」や「瞼の母」などの芝居です。20代前半くらいまでは、若過ぎて微妙だったんですけど、やりやすくなりました。自分自身の年齢や人生の経験と、役の感じがしっくりくるようになったんでしょうね。幅がひろがってきました。

今日(取材日2020年7月3日)のお芝居は、「戻り橋」ですね。

悲しいお芝居ですが、僕は結構好きなんです。いま自分がやってる芝居のなかで、終わり方が一番おしゃれ。自分で「おっしゃれやなー」って思います(笑)。

大衆演劇をよく見る方はご存知かもしれませんが、この芝居は、幼いころにはぐれてしまった息子を待ち続けて、橋のたもとで甘酒を売っている老婆と、そこにたまたま通りかかった、幼いころに母親に捨てられたと思っている泥棒の男の、ふたりのやりとりで進んでいきます。

話すうちに自分たちは親子なんだと互いに気づくのですが、それぞれの人生を思いやって名乗りはあげない。その切ない最後の場面、男は、父親の違う自分の兄弟に縄をかけられて終わるんですが、うちの劇団はその先があるんです。

男は処刑されてあの世に行って、死んだあとで自分の人生を振り返る、という場面をつくっています。この芝居は、もともと紅あきらさんが、うちでやってるいいお芝居があるよと立ててくださって、死んだあとがあるのは、紅あきらさんの演出でもあるんです。ただ、そこで思うようにしゃべっていいよと教えられたので、ここから先がオリジナル。

うちの劇団でやってるのは、もう一度、いままで出てきた町の人たちが全員出てきて、男の体をすりぬけていくという演出です。それで男は、ああオレはもう死んじゃったんだなと気がつく。そしてさらに、僕がやったのは、ふところに手を入れると、そこにてぬぐいが入ってる。そのてぬぐいは、自分が捕縄をかけられたときに、老婆が、つまり母親が、手元を隠してくれたてぬぐいなんですよ。捨てられたんじゃない、ちゃんと愛された自分だったんだと、おかあさんのてぬぐいをあの世に持っていく感じで終わる。

みなさん、めっちゃ泣きます(笑)。この最後の場面で、徳永英明さんがカバーしてる、ユーミンの「あの日に帰りたい」が流れる。ここでこの曲なの?っていう選曲、これも紅あきらさんの演出なんですが、さすがだなあと。演じていてわれながらゾワッときます。悲しいまま終わらないのが、おしゃれなんです。

(2020年7月3日 三吉演芸場にて)

取材・文 佐野由佳

【二代目恋川純 インタビュー連載】
第1回 いろんなものを捨てました!
第2回 コロナのおかげで
第3回 しからずんば、ぬ〜ん
第4回 荷物をまとめた「13の夜」
第5回 小純が純になったワケ
第6回 努力の人
第7回 父の教え
第8回 座長二代目恋川純ができるまで

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