第7回 父の教え

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初代から教わったことはどんなことですか?

見て学べっていう人なので、こうやるんだよって教えてもらったことはないです。だからずっと見てました。特に、13歳で役者を続けていくって決めてからは、お芝居も、それまでよりもずっと真剣に。

どんなことを思って見ていましたか?

お父さん(初代恋川純)が三枚目で、兄貴(恋川純弥)が二枚目っていう芝居が多かったんですよ。「ああ、あの三枚目はオレにくるな。絶対、あれやな」って思ってました。

当時から、三枚目のほうを?

昔はやっぱり兄貴みたいになりたかった。憧れてましたから。でもあれは、あの人が持って生まれた、根っからの二枚目役者の気質なんですよ。それに気づき始めたのが10代のそのころで。気づき始めたっていうのは、成長してたんでしょうね。

その歳でその客観性はすごいですね。

どっちかっていうと、初代寄りの方向なんだろうと思いはじめまして。そう気づいてからは、子分で出てるときのキャラクターも、それまではピシっとカッコよくしなきゃってしてたのが、もっといろんなことしゃべるようになったし、いろんなことをやるようになったんです。

お客さんの反応も変わりましたか?

面白くなってきたって感じで。当時は、姉ちゃん(鈴川桃子)もいて、兄貴の相手役は全部やってたんですよ。おばあさんもできますし、娘役もできる。若い役は純加(すみか)ちゃん(鈴川純加)がやって、もっと年上は母親(鈴川真子)がいるでしょ。人数も15、16人いましたから。メンバーとしては最強でした。

三枚目の役は楽しかったですか?

最初、むずかしすぎて、15歳から20歳くらいまではずーっと気が重かったです。

それは意外です。

何をやってもいいわけじゃない。そこはうちのお父さん、厳しいとこがありましたね。お客さんをおちょくるようなこと、下品な下ネタ、あとは楽屋ネタをひっぱってきてダラダラしゃべる、そういうことをやると、めちゃくちゃ叱られました。

いいお父さんですね。

汗かいて、一生懸命やって笑ってもらうのが三枚目。適当にやるなら、やらなくていいっていわれました。だから何をやっていいかわからないし、どこまではっちゃけていいかもわからなかった。

いつからふっきれたのですか?

その5年でベースを鍛えられて。お客さんがどんどんのってきてくれるようになってからですかね。いまは逆に、お父さんから、やりすぎやでって笑いながらいわれてます。もう自分が座長だし、認めてくれてるんでしょうね。だから好きなようにやります。めちゃめちゃですもん。1時間以内で終わる芝居も、最近、1時間10分、15分(笑)。

(2020年7月3日 三吉演芸場にて)

取材・文 佐野由佳

【二代目恋川純 インタビュー連載】
第1回 いろんなものを捨てました!
第2回 コロナのおかげで
第3回 しからずんば、ぬ〜ん
第4回 荷物をまとめた「13の夜」
第5回 小純が純になったワケ
第6回 努力の人
第8回 座長二代目恋川純ができるまで
第9回 おしゃれな最後

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