「大衆演劇の革命児」近江飛龍 文・山根演芸社社長 山根 大

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 その役者、それが近江飛龍だ。

 そして、飛龍はそういう「大衆演劇」に飽き足らなかった。だから、それを変えようとして来た、と思う。だから、私は飛龍を一貫して「大衆演劇の革命児」と呼んで来たのだ。

 飛龍について語る。

 この紙数では到底無理だと思える。

 余りにもエピソードが多いし、余りにも思い入れが過ぎる。

 余りにも近すぎ、余りにも遠い。

 飛龍が私をどう考えているのか、それは分かるようで分からず、「きっとこうだろう」という結論はあるが、それが夢の持てない姿をしているなら、それを受け入れることはとても苦しい。

 飛龍が飽き足らなかったように、私も「大衆演劇」に飽きたらなかった。

 史村翔 原作 池上遼一 画によるコミックに「サンクチュアリ」がある。

 高校の同級生だった二人の少年が「この国を変えたい」という大望をともにする。具体的にそれを実現するにはどうすれば良いか。二人は日本社会の表と裏の両方からそれを成し遂げようと考える。知力・気力ともに非凡な二人は役割分担をすることにした。一人は表、一人は裏からその目標を成し遂げるのだ。それで片や政治の世界、片や裏社会に身を投じる。

 もう20年前の作品だが、間違いなく面白い。

 そこまで、とは言わない。

 しかし、似たものはあったかも知れない。

 飛龍は舞台そのもの、私はシステムを変える。

 それが暗黙の約束だった。

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